年を重ねるについてよく出現する現象。
「この人見たことあるのに名前が思い出せない」
その現象が起こる理由は脳にあります。が、ただ単に加齢により忘れやすくなったからではありません。
脳の機能からして、名前と顔、その人に関わるストーリー(エピソード記憶)が一致するのはせいぜい80~250人くらいと考えられています。
この辺の人数の幅はもともとの機能の差っていうやつですね。
私たちの脳はそれぞれの部位で果たす役割が異なります。
まず、顔を認知するのは側頭葉の底部の紡錘状回で大きく働きも強いのでちらっと見ただけの人の顔も記憶に残りやすい仕組みになっています。
次に相手の名前を覚えるのは側頭葉外側(意味記憶を司る:学習活動によって得られた知識やモノの言葉の対応などに対する記憶)です。
そして、その人と会った時のエピソードを記憶するのは側頭葉内側(エピソード記憶:前日の夕食やイベントなど個人の体験に関わる記憶)です。
それぞれ違う場所で認知するため、それらがつながらないと、顔と名前とストーリーが一致しません。
人の顔は覚えやすいのに名前とストーリーは覚えにくい構造になっています。
昔と比較して、最近は顔と名前が一致しなくなったという感覚は覚えられる人数の限度により生じていると考えられています。
年を重ねるにつれて出会う人数も増え、覚えておきたい人の数も増えていきます。
その為、学生時代など付き合いの範囲が限られていた頃よりも「顔と名前が一致しない」という現象が起きやすくなります。
パッと見て覚える直観的な記憶力は物事に重みづけをせずに並列的に覚えてしまうため、優先順位を付けられないなど応用性が乏しく、大人には不要な記憶力とされています。
なぜなら、この直観的な記憶力というのは、生命の危機の為に必要とされていたもので大人になるほど薄れていくからです。